1-2 「暑さ」「寒さ」の指標

普段、我々は「気温」を暑さと寒さの指標とするが、「暑さ」と「寒さ」の仕組みで分かる通り「気温」以外の要素についても考慮する必要がある。
具体的には次に挙げる6種の「温熱感覚要素」がある。
①活動状態
②着衣状態
③気温
④放射
⑤湿度
⑥気流
これら温熱感覚要素の組み合わせにより、人の暑さ寒さの指標を数値で表し室内環境の評価を行うことができる。
この指標を温熱環境指標と言い、学術的によく知られるのはSET(標準有効温度)やPMV(予測平均申告)などがある。
これらの指標の詳細については東京大学名誉教授 坂本雄三先生の著書「建築熱環境」をご参考いただきたい。

温熱環境指標のひとつに、気温、湿度、気流を考慮したミスナールの計算式があり、比較的容易に体感温度を算出することが出来る。
しかし、この計算式による体感温度が、現実に有効かどうか確認が出来なかったので説明は保留とする。

もっとも簡単な指標としては気温と放射のみを考慮した「作用温度」がある。
「作用温度」は気温と放射温度を熱伝達率で加重平均した温度であり、簡単に表すと気温と放射温度を平均した温度にほぼ均しい。
作用温度 = ( 気温 + 放射温度 ) ÷ 2 (℃)
放射温度は周囲からの放射温度の平均温度を表し、次の式による。
放射温度 = ( 床面積 × 床の表面温度 + 壁面積 × 壁の表面温度 + 天井面積 × 天井の表面温度 + 窓面積 × 窓の表面温度 ) ÷ 合計面積

もしも、室の気温が26℃で周囲の放射温度が30℃の場合、作用温度は28℃となり気温よりも2℃高くなる。気温と放射温度以外の要素の影響があるので、この作用温度が体感温度とは言えないが放射温度の影響が大きいことは分かる。

以上のように人の暑さ寒さの指標が幾つか提案されているが、住戸単位で考える場合、その居住者がどのような環境で暑く、または寒く感じるかを知ることが重要である。
すなわち、4人家族なら4人それぞれが平均的に快適と感じる「温熱感覚要素」の組み合わせを導くことが重要となる。
快適な室温と湿度の目安は下表を参考にされたい。

活動状態 代謝量(met) 着衣量(clo) 室温(℃) 湿度(%)
椅座・夏 0.7~1.0 0.4~0.6(シャツ程度) 25~27 40~60
椅座・冬 0.7~1.0 0.8~1.0(ジャケット程度) 23~25 40~60
軽作業。夏 1.0~1.2 0.4~0.6(シャツ程度) 23~25 40~60
軽作業・冬 1.0~1.2 0.8~1.0(ジャケット程度) 21~23 40~60

※室温 = 平均放射温度(MRT), 気流速度 < 0.2m/s
出典:建築環境工学用教材・環境編 (日本建築学会 , 1995) / 建築熱環境 (坂本雄三)