1-5 局所的な不快環境

1-2 「暑さ」と「寒さ」の指標 で人が一般的に快適と感じる気温と湿度の目安を示した。
しかし、室内空間においては温度のバラツキなどが原因となり、不快に感じる環境が局所的に発生する場合がある。
例えば、冬に冷えた窓ガラスの周囲や居室よりも極端に寒いトイレなどが局所的な不快環境にあたる。
局所的な不快環境を発生させる原因とその対策につき次にまとめる。

1.不均一放射温度
例として挙げた窓ガラスなど、周囲の平均放射温度よりも温度が低い部分からの放射は「寒い」不快感をもたらす。
また、温度が高い天井は「暑い」不快感をもたらす。
不均一放射温度による不快感を解消するための目標は、冬の表面温度は室温-10℃までに抑制、夏の表面温度は室温+5℃までに抑制することが目安である。
温度差を無くすためには外皮の断熱化が必要である。また、生活の工夫としては放射式暖房器を使ったり、カーテンを閉めるなどの方法がある。

2.上下温度差
室内空間の上下で温度差がある場合、「寒い」不快感を生じる場合がある。
通常、暖かい空気は上部に溜まるので足下が冷えた状態となりやすい。
上下温度差の目標は足下と頭で3℃以内である(ISO7730)。
上下温度差を無くすには、外皮の断熱化と放射式暖房器の使用が有効である。
床暖房は放射式暖房として上下温度差を解消できるメリットがあるが、床の表面温度は室温より高く30℃近くになるので、人によっては不快感を感じる場合がある。無垢のフローリングの使用により床面温度は室内気温とほぼ同等になる。
なお、無垢のフローリングでも樹種によって暖かさの感じ方が異なる。
密度の高い広葉樹(ナラやカバ桜)よりも、低密度の針葉樹(杉やヒノキ)のほうが表面の熱伝達率が低く、足の裏の体温が移動し難くいので暖かく感じやすい。

3.コールドドラフト
室内に温度差があると空気は温度の高いところから低い方に流れ、気流(風)を発生する。これをドラフトと呼ぶが、特に冬に窓ガラスの周囲などで発生するものをコールドドラフトと言い局所的な不快環境をつくる。
冬、冷えた窓ガラスに空気が流れて接すると冷やされて床面に降下する。この時に発生する冷たい気流(風)を受けると、人は熱を奪われるので不快感を感じる。さらに床の表面温度の低下により足下が冷えることで不快感が増す。
先に述べた不均一放射温度と上下温度差、そしてコールドドラフトを無くす共通の手段は窓ガラスの断熱性能の強化である。
カーテンを閉める方法もあるが、結露が発生しやすい状況をつくる。(後で詳しく説明する。)
筆者は断熱屋であるが、予算組は窓の断熱強化を最優先にするべきと考える。