1-6 室内の温熱環境と健康被害

人の健康が、長時間を過ごす室内環境に左右されることは言うまでもない。
室内環境には様々な要素があるが、ここでは温熱要素に絞って健康との関係を述べたい。
まず、室内の温熱環境が原因となり生じる健康被害を挙げる。
① 冬期に気温差によって生じるヒートショック
② 夏期に高気温によって生じる熱中症
③ 過乾燥により生じる、インフルエンザなどのウィルス感染症
④ 高湿により繁殖するカビやダニの吸引により生じる、肺炎やアレルギー症
この中でも特に深刻なのは、高齢者のヒートショックである。
寒い環境では、体温を逃さないよう毛細血管が収縮するため高血圧となる。高齢者が暖かいリビングなどから気温が低いトイレや浴室などへ移動する時、血圧が急に高くなり心筋梗塞や脳溢血などの障害を引き起こす恐れがある。
このヒートショックにより毎年、多数の命が奪われている。その被害数は浴槽での溺死を含めての統計で毎年1万人を超えるとの報告もある。
ヒートショック対策は、建物の断熱化と暖房により室間の気温差を無くすのが有効である。しっかりと断熱化された建物では、浴槽の湯は浴室の気温を上げる熱源にもなる。
また、溺死の原因として、浴槽内での熱中症も疑われる。
暖かい浴室内で、ぬるめのお湯に入浴することで熱中症を回避するべきである。

間仕切り壁まで断熱化するケースを時々見掛けるが、室間の気温差を生じる原因となるので健康の観点からはお勧めできない。